地味OLの憂鬱~私は仕事に生きたいのに、三人からのアプローチにタジタジです!!
百周年記念パーティー
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テナントにあるシャンデリアの輝くパーティー会場に玲奈は来ていた。テナントは日本の古き良き文化を全世界に発信する施設として建てられた。テナントの最上階はパーティー会場となっていて、パーティー会場に入ると目の前には大きなガラス窓が広がり、大パノラマの景色が広がっている。パーティー会場から直結で行ける屋上の庭園はそれは素晴らしいとセレブ達の間でも有名で、玲奈も一度は行ってみたいと思っていた。
優人からの「明日待ってる」それは今日のパーティーのことだった。
今日はA&Bの百周年記念パーティー。
パーティーに出ることのない玲奈は目立っていた。
「まあ、あちらのご令嬢どなた?」
「見たこと無いわね?」
玲奈を見た令嬢達はクスクスと笑いながら品定めでもするように、嫌な視線を向けてくる。
男達の視線も感じるが、いやらしさがあるのは顔を見れば分かる。
はぁ……。
これが嫌なのよ。
沢山の人達からの視線から逃れるため、ウエイターからお酒を受け取ると、壁際へと向かった。それから五分が過ぎた頃、会場がざわざわとザワついた。人々の視線が会場の入り口へと向いているため、玲奈も入り方へと目を向けると一人の女性がオドオドしながら立っていた。
なっ……どうして、ここに佐藤さんが……。
萌は仕事帰りなのかスーツのままだった。そんな格好では逆に目立ってしまう。
派手な赤いドレスを着たご令嬢が、萌に近づいていく。
「あなたそんな格好で何しにいらしたの?」
周りにいたその他のご令嬢もクスクスと笑っている。
「やだ……あんな格好で……クスクス」
「庶民かしら?」
萌は顔を赤くして俯き何も言わない。
そこへ、いかにも遊んでいそうな子息がヘラヘラと笑いながら現れた。
「どうしたんだい?こんな所に……スーツ姿のお嬢さんとは珍しい」
「まぁ!!瑛人(あきら)様お久しぶりですわ」
赤いドレスの令嬢は萌をにらみつけていた表情から一変、満面の笑顔で瑛人に挨拶を交わす。
「やあみんな、元気そうだね。それで……どうしたんだい?ほら、これでも飲んで」
瑛人が萌に赤ワインのグラスを手渡すと、萌は震える手でそれを受け取り口をつけずにジッと見つめていた。
「瑛人様そんな子放っておいて向こうでお話しましょう」
赤いドレスの令嬢が無理矢理、瑛人の隣に行こうとしたため萌の腕にドンとぶつかった。その弾みで萌の持っていたワイングラスが床に落ち、コロコロと転がり床にシミを作った。
萌は顔面蒼白のまま動くこともできず、ワインが絨毯に染み込むのを見ていると、落ちたワインのグラスの先にいた赤いドレスの令嬢から悲鳴が上がった。
「キャーー。大変、瑛人様のスーツに染みが!!」
萌はハッと顔を上げると瑛人が振り返った。その顔に先ほどのヘラヘラとした笑みはない。
「おい!!お前どうしてくれるんだ?お前のような庶民には手が出せないほどのスーツなんだぞ」
「ご……ごめんなさい弁償を……」
「あたりまえだ!!」
涙をこらえ唇をグッと噛みしめる萌の姿が痛々しい。
「お待ちなさい!!」
一部始終を見ていた玲奈は我慢ができず、前へと進んでいった。
「わたくしは、あちらで一部始終を見ていましたのよ。こちらの女性に非はないのでは?」
「はぁーー?」
「ワインをかけてきたのはこいつだろう」
「ですが、わざとではありませんよ。少しワインがついてしまっただけではありませんか、少し騒ぎすぎですよ」
周りの視線がスーツに集まりクスクスと笑いが起こる。
「やだーー」
「あれぐらいで……ねぇ……」
瑛人は両手をギュッと握り締めると顔を赤くしながらワナワナと震えだした。