地味OLの憂鬱~私は仕事に生きたいのに、三人からのアプローチにタジタジです!!
萌side


*萌side



A&Bの百周年記念パーティーの始まる一時間前に時間は遡る。



部長、萌、涼の三人は、仕事が終わり帰り仕度を始めた頃一本の電話が鳴った。

電話に出た萌は声を上げ「申し訳ございません。すぐに確認いたします」そう言うと頭を下げ、電話を切った。

何かあったことを察した部長は萌に話しかけた。

「佐藤くんどうしたんだい?」

「今回のプロジェクトに使う家具と雑貨に問題が発生したというもので、今日中に確認してもらいたいとのことです」

萌と涼は手分けをして、玲奈とA&Bに連絡した。しかし、玲奈は帰った後で連絡がとれず、A&Bは直接副社長に連絡してほしいとのことだった。しかし副社長とも連絡が取れず、途方に暮れていたところ、今日はA&Bの百周年記念パーティーのため副社長はスマホの電源を切っているのではないかとA&Bの社員に言われ、唖然とした。

招待もされていないのにパーティー会場に行くことも出来ない。

どうしよう、どうすることも出来ない……。

三人がそう思ったときA&Bの社員の一人がパーティー会場に電話し、何とか副社長に連絡を入れてほしいと話をしてくれた。しかしパーティー会場のスタッフからは、副社長は沢山の人達に囲まれ接客をしているため、近づけないとの返答だ。

また振り出しに戻ってしまった……。


どうすることも出来ない……。

しかしここで待っていてもどうにもならない。三人は、パーティー会場内に入ることは出来なくても、パーティー会場のロビーで副社長が出てくるのを待つことにした。


パーティー会場のロビーに着くと三人は副社長を待っていた。ロビーは静まりかえっていて、パーティー会場から人が出てくる様子は無い。

待ちくたびれた萌はトイレに行ってくるとその場を離れた。その後しばらくしても帰ってこないため、何かあったのではないかと部長と涼は萌を探すことにした。


その頃、萌はトイレをすましロビーへと向かっていると、一人の若いウエイターが前からやって来た。ウエイターは萌を見かけると「パーティー会場はこちらですよ」と手を引きパーティー会場内へと連れ込まれてしまった。

「ちっ……ちょっと待って私は違う……」

気がついたら会場の中にいて、人々の視線を集めていた。

「なっ……何?」

周りから聞こえる人を揶揄ような言葉。

怖い……

萌は会場から出ようと後ろへ下がろうとした時、真っ赤なドレスの令嬢が話しかけてきた。

「あなたそんな格好で何しにいらしたの?」

蔑むような視線を向けられ、俯くことしか出来なかった。回りからの冷やかす冷たい言葉に体が小さくなるような錯覚さえする。

やだ……。

逃げ出したいのに足が動かない……。

床に足が貼り付けられてしまったかのように動けない萌の所へ、ヘラヘラと笑いながら富沢の子息がやって来た。

「どうしたんだい?こんなところで……スーツ姿のお嬢さんとは珍しい」

救いの手が差し伸べられると思った……。

でも、それは違った……。

ヘラヘラ、ニタニタといやらしい目つきで萌の体を上から下までなめるように見てくる男の視線に自分の体を抱きしめた。

「ほら、これでも飲んで落ち着いたら?」

優しい言葉には裏がある。そう思わせる瑛人の表情に背筋がゾクリとする。ワイングラスは受け取った萌はそれに口をつけて良いのかも分からず見つめていた。

萌をかまう瑛人の様子が気に入らない赤いドレスの令嬢は、瑛人に近づくと同時に萌にワザとぶつかり、萌の持っていたワインを落とさせた。

「キャーー」赤いドレスの令嬢の叫び声で我に返った萌は瑛人のスーツに付いてしまったワインの染みに青ざめた。

どうしよう……。

「ごめんなさい。弁償を…」萌が言い終わる前に瑛人が言葉を重ねてくる。

「あたりまえだ!!」

男性からの大きな声に体が小刻みに震え、目に涙がたまっていく。

泣いたらダメだ、グッと唇を噛みしめた時。凜とした声か会場に響き渡った。

顔を上げるとそこには凜とした声の持ち主である美女が立っていた。

そこからは目の前に立つ美女独壇場の様だった。悪役をやっつける正義の味方のように華麗に言葉を放っていく。

最後に瑛人が肩を落としガックリと項垂れている姿に、かわいそうにとさえ、思ってしまうほどだった。

萌は助けてくれた美女と共に会場を後にした。会場の外に出ると美女は優しい言葉と共に萌の頭を優しくなでてくれた。すると緊張の糸が切れ、体から力だ抜けるのを感じたとき、大きな声で泣き出してしまった。

うーー。こんな子供みたいに泣いて恥ずかしいけど、涙だ止まらないよーー。


目の前にいた美女が優しく頭をなでてくれたため余計に涙が溢れ出した。




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