地味OLの憂鬱~私は仕事に生きたいのに、三人からのアプローチにタジタジです!!
匠side


*匠side


俺は加藤匠(かとうたくみ)32歳。

俺とお嬢様の出会いは俺が6歳の時……。

お嬢様の母である奥様が、二人目の出産は自宅でと強く望んだため、その日の一条家は朝から皆がバタバタとしていた。

匠は朝食を二歳年下の大河と一緒に摂っていた。いつもなら、この二人が一緒に食事をすることはないが、今日は違った。

バタバタと廊下を走る音が聞こえてきたと思ったとき、慌てた様子の親父がやって来た。

「大河様すぐにいらしてください」

俺と大河は急いで奥様の寝室までやって来た。すると、部屋の中から可愛らしい泣き声が聞こえてきたんだ。

大河が恐る恐る部屋の中に入っていく。俺も後について部屋に入ろうとしたが、親父に止められた。

「お前はここで待ちなさい」

「あら、いいわよ。匠さんもこちらへいらっしゃい」

奥様は疲れた様子だったが俺を迎え入れてくれた。

奥様が横になっているベッドまでゆっくりと歩いて行くと、そこには産まれたばかりの赤ちゃんがいた。

大河は「何だサルか?かわいくない」と、ぶっきらぼうに言葉を吐き捨てていたが、俺は思った。


わーー。かわいい。小さい……。

すごくかわいい……。

俺の目が輝いていることに気がついた奥様は、赤ちゃんを俺の腕の中へ入れ、抱っこをさせてくれた。赤ちゃんを落とさないよう、しっかりと抱きしめた俺は何とも言えない感動を覚えていた。

うわーー。

やわらかいーー。

ふわっと良い香りまでする。

その時、目をつぶっていた赤ちゃんがパチッと目を開けた。まだ目は見えていないはずなのに、赤ちゃんと目が合ったような気がした。

俺はその時思ったんだ。

この子は俺が守ると……。
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