ミライデザイン
「なりそうじゃない?棗、結婚したら何かと都合がいいっていってたから」
アイスコーヒーのストローをくるりと回してみても、ほとんど氷が溶けてしまったグラスからは音がならない。
ものさみしくアイスコーヒーを吸い上げると、アメリカン以上に薄い味。
ナチュラルウッドの机には、グラスからポタポタと落ちた水滴がしみになっていく。
「やっぱり、棗くんとちゃんと話さなきゃダメだね。どういうつもりで言ったのか、沙祈とのミライをどう考えているのか。聞かなきゃ」
「…私に結婚する気なくても?」
「棗くん次第では、する気になるかもしれないでしょ?」
する気に、なるのかな?
うーんと首を傾げる私に葉奈は前向きな言葉をくれるけど、その前向きなミライを、私は想像することができない。
「…純粋にプロポーズ喜べるようなかわいい女でいたかったなぁ」
“好き” 以外なにも、いらないのに。
世界で最上級のしあわせは、それ以外にありえないのに。結婚なんて。
みつからない答えに薄くなったコーヒーを飲み切ると、最後に空気を吸う音がむなしくした。