ミライデザイン
私になにか、話すことあるでしょ。
九条社長と橘社長から引き抜きの話を聞いてすぐ、棗にLINEを送ろうと思って。トーク画面に文字を打ち込んだけれど、送信ボタンを押せずにいた。
棗は、なにを考えているのか。
なにを思って、私に話さないでいたのか。
…もしも。
私に話すつもりがなかったらどうしよう、と。そんな不安までチラついてしまう。
昨日、結婚はしたくないと突っぱねた私に、もう一度、私達のミライについて考えてみてと言ってはくれたけれど。
私の勝手な態度に、付き合いきれないと思ったかもしれない。ちゃんと結婚につながる人をみつけようと、私から、心が離れてしまっていたら。
そんな風にゆらゆらしていると、開いたままのトーク画面が動いた。
"仕事終わり、家いくから。沙祈に話ある"
棗からのLINE。縁が切れていないことに少しだけホッとして。
だけど、話ってどの話だろう?
結婚のこと?引き抜きのこと?
それとも、どっちもかな。
詳細まではわからないまま、"わかった" と、ひとことだけ返事をした。