ミライデザイン
自分から知りたがったくせに、目を逸らしてうつむいてしまった私の顔をあげようと、棗の手が伸びてくる。
それを、片手でとめた。
「…みんな、最初はきっとそうなんだよ」
大切にあたためて、育んだ愛が、永遠の契約を交わした途端に、崩れていくなんて。
…誰だって予想してない。
この人となら、歩いていける。愛にあふれたミライを思い描けるから、結婚という道を選ぶのに。
「それでもダメになっちゃうの。
…私、棗とダメになりたくない。
万が一に、なりたくないの」
声が、ふるえてしまった。
うつむいた顔をもう一度あげて。掴んでいた棗の腕をぎゅっと握ると、応えるように引き寄せられて、その腕の中へ。
「なるかよ」
抱きしめられたんだと気づくよりもはやく、棗のあつくて大きい手が、私の頬を包んだ。
「俺らのミライは、俺らでつくっていくんだ。
一例に当てはめるなよ」
泣いてもいないのに、みえない涙を拭うようにやさしく頬をすべる棗のぬくもりに、泣いてしまいそうになる。
すっぽり収まってしまう腕の中で、変わらないミライを、信じてしまいたくなるよ。
「でも…わかんないよ?先のミライで、形のないキモチが、どうなってるかなんて」
素直に、信じればいいのに。
無駄に頑固で。
今日、棗に会うまでは、それを理由に愛想を尽かされたらどうしようと怯えていたのに。同じ理由でまた、棗を困らせている。
「…棗だって、都合がいいから結婚しようっていった」
余計なことまで思い出しちゃうし。
かわいくないなぁ。
だけど、棗との関係を、義務にしたくなくて。放置できなかった綻び。
迷いながらも伝えると、棗の胸に手を添えて見上げた先で、逃げるように目を逸らす棗をみつけた。
「それは……」
私もそうしたいと、逃げ出さずに済んだのは、棗の表情から、行動ほど悪くない、予感がしたから。
その顔を、棗は片手で隠して、私の方をみた。
「…既婚者になれば、ムダな期待をするやつも減るだろ」