ミライデザイン
手で覆った隙間からのぞく頬と耳が、ほんのり色付いていって。染めるごとに、私も意味を知っていく。
こういう時、逸さずに真っ直ぐみつめてくる猫目は、ずるくて。
「…っもう、なに言ってるの!」
今さらそんなと、思いながらも、棗の熱がうつったように顔が熱くなる。
恥ずかしさを誤魔化すように棗の胸を軽くたたいてみたけど、余計に実感するだけだった。
だって、まさか。
付き合って3年半も経つのに、未だに棗の中にそういうキモチがあるなんて思ってなかった。
ムダな期待をするやつって、職場で関わる棗以外の異性のことでしょ?それを減らしたいって思ってたってことはつまり……
やきもちって、ことだよね?
都合がいいから結婚したいって、そういうこと?
「部署的な問題にしても、関わるやつ多すぎなんだよ。沙祈は」
あからさまに唇を尖らせて、不服という2文字を全面に出してくる棗が、私の疑問に対する答えなんだと教えてくれる。
それは、日常のあまい雰囲気で感じる胸の高鳴りよりも、ずっとピュアで、くすぐったかった。
誰にもとられたくないという部分だけをみると、私と棗は、同じキモチなんだ。
「でもほら、社内公認だし?」
「関係ないね」
ゆるんでしまう私に対して、さらに拗ねてしまう棗に、想う愛おしさ。
こぼれるままに、下がる目尻の中でみつめると、気づいた棗が、こつんと、おでこを重ねてくる。
覗き見すると、棗のまぶたは閉じられていて。なにかを想うように、静かな呼吸を感じたから、同じように、私も真似た。
ふたりの呼吸がおなじになった時、口をひらく、音がした。
「俺のいないとこで、他の奴らに沙祈が狙われんのとか、ムリ」