ミライデザイン
「…そういうこと」
棗の代わりなんていない。棗以上なんていない。
結婚に対するキモチが違うだけで、棗と私のキモチは、なにひとつ違わないようにさえ思う。
そんな棗となら、結婚しても大丈夫なんじゃないかって。変わらないミライを。愛し、愛され続けるミライを築いていけるんじゃないかって。
動きはじめてるキモチがあることは、たしか。
それでも首を縦に触れない私のキモチを見透かすように、棗は私の頭をくしゃっとした。
「言ってもま、ミライもキモチも不確かだし。
俺は確信してるけど、沙紀が不安に思うのもわかったよ」
それはたぶん、先のミライで、形のないキモチがどうなってるかなんて分からないといった、私の不安について。
「だからさ、婚約で試してみてよ。
結婚したら俺らのミライが変わるかどうか」
自由で気ままで、強引なクセに。
こんな風に、私のキモチを大切にしてくれて、分かろうとしてくれて。愛してくれて。ミライを信じてくれて、手を引いてくれる。
そんな棗の代わりなんて、どこにもいない。
いる訳がない。
…だからこそ、私は、こわがっているのかもしれない。
唯一無二の大切なものが、こわれてしまうかもしれない、ひとつの死にも似た、そんな可能性を。