ミライデザイン
コール音ひとつで、2人の間に流れていた空気は別モノになる。
休日とはいえ、仕事の一種。
棗にとっては、新しい環境に踏み入れる最初の日で、大切な1日だから、ちゃんとしなくちゃ。
目配せをして、受信マークをタップした。
「はい、如月です」
「沙祈くん?分かるかな?」
「え?」
誰?
iPhoneを耳にあてると、馴れ馴れしく私を呼ぶ、聞き慣れない声。
咄嗟に画面を見直すと、間違いなく登録のない番号で。普通だったら、迎えにきてくれた業者のはずだけど。
…沙祈くん?
わかるかな?って聞かれても、私のことを沙祈くんなんて呼ぶ人が思い当たらない。
「もしもーし?」
私の反応から怪しく思ったのか、棗が眉を寄せて近づいてくる。どうしたと。
棗と表情で会話しながら思考を巡らせるけど、…どうしよう、全然わからない。
でも、なんだろ。
どこかで聞いたことがあるような、この声。
1音1音、希望をまとっていて。
まるで、太陽みたいな。
絶対的プラスオーラ。
「…あ。もしかして、橘社長ですか?」