ミライデザイン
隣にきた棗が、反対側からiPhoneに耳を当てたタイミングで、繋がった可能性。
「さすが、沙祈くん。
九条社長が信頼を寄せる人事部だけあるね」
「いえ。突然のことで、すぐに気づけず失礼しました」
沙祈くんなんて呼ばれたこともないし、ご挨拶しかしてないから自信もなかったけど。やっぱり。
あの太陽みたいな声は、橘社長の他にいるはずなんてなかった。
「…ところで。このタイミングでお電話いただいたということは、…まさか?」
「察しのよさ、抜群だね。そのまさか、だよ」
そんなはずがないと思いながら、近づいてきていた予感。
扉の向こうで、セキュリティーが解除される音がして。電子機器を通して聞こえていた声が、オフィス内に広がった。
「おつかれ。迎えにきたよ」
同時に入ってきた、廊下からのヒカリ。
入口に顔を向けると、窓から差し込む太陽にさえ、愛されているライオンが、朗らかに微笑んでいた。
社内では言わずと知れた、ふたごの秘書を従えて。