ミライデザイン
大事な話って、一体なんだろう?
棗だけでなく、七星さんや北斗さんも同乗することは許されなくて。私も、助手席以外に腰を下ろす選択肢をもらえなかった。
話しづらいからと言われたら、ね。
乗り慣れない上質な革張りのシートと、理由の読めない展開に、落ち着かなくてしょうがない。
なにか、見落としてる重要なことはないかと。
フロントガラスに頭の中を写して探す。
「大丈夫。沙祈くんが予想してる中に、答えはないから」
着いていけていない私をおいて、迷いなくアクセルを踏み走り出した橘社長。
運転する横顔は、しっかりと前を見据えているのに、隣にいる私のことまで、全てお見通しみたい。
「はじめて聞くこと、なんですね」
予想してる中に答えがないと言うことは、つまり、そういうこと。
頷く代わりに橘社長の口角が上がり、真っ白な歯が覗いたかと思えば、走り出したばかりの車が止まる。
赤信号の間だけ許された短い自由で、橘社長が、私をみた。
「来月から、きみに出向してもらいたいんだ」
橘社長の瞳は、棗とちがった薄茶色をしていて。
一瞬、なにをいってるのかよく分からなかった。
「…橘社長の会社に、ですか?」
「もちろん」
「…えっと」