ミライデザイン
「その反応は、沙祈くんを困らせたかな?」
「いえ。光栄なことです。…ただ、びっくりして」
だって、橘社長の会社に出向するということは、棗と同じ会社に勤めるということ。離れ離れにならないということ。
その代わりに、私も、環境が変わるということで。
近い距離にいられることは、うれしいはずなのに。
……どうしよう。
余裕がなくなってしまうかもしれない。
余裕がなくなってしまったら、私達は。
意外そうな顔をみせる橘社長に、首を左右にふって答えてはみたけど、頭の中では、ぐるぐると不安がめぐっていた。
「よかった。うちの人事部を強化したくてね。
沙祈くんが、丁度いいんだ」
その後、橘社長との会話をどうやってうまく続けていたのか分からない。
信号が青になって、前を向いてハンドルを握り直す橘社長の横で、棗との新しい生活のことを考えていた。