ミライデザイン
真っ直ぐに的を得てくる棗の言葉が、今は痛い。
棗がしてくれることの反対を、私は棗にしてばかりいる。
「…うん。私も、いい話だとは思ってる。
…だからね。婚約のこと、考えてみるっていったけど、一旦ナシにしたいの」
…もしも、棗と同じ分だけ、他の誰かと過ごしたとして、決して棗と同じように、私の心にふれられる人はいない。
…それほどの人に出会えたのに。
出会えたから。
しあわせだけをみて、動けないの。
「…仕事に集中したいってこと?」
「そう、なっちゃうと思う。
そうなったら、私……壊しそうで」
「……俺らのこと?あり得ないだろ」
私達の間に、どんなことがあっても必ず繋いでくれるほど強固な橋が、目にみえてあればいいのに。
私から手を離したから。いつもならすぐに触れてくる棗が、抱きしめもしない。
何度か動きかけた指先が、視界の隅を彷徨っただけ。
「……私にも、棗がみてるミライがみえたらいいのに」
ただ、眉を寄せた棗の顔が、ゆらりと歪んだ。
泣くのは違う。わかってても、あふれてくるこの複雑な感情は、涙以外にはなれなかった。
「…その為に、婚約提案したんだけど」
「だから、落ち着いたら…」
「いつ?」
間髪入れずに放たれた質問は、望まない予感の匂いがして。
大好きなブレない猫目に、今は、警報が聞こえる。
「いつまで待てば、沙祈の心の準備は、整うの」
「……それは」