ミライデザイン
サイレン。危険信号。
似たような感覚を、棗が引き抜きの話を黙っていたときにも感じたことはあったけど。
今は、それとは比べものにならない恐怖。
闇夜に響いた音は生々しく。
ヒトコトでも間違えば、二度と、棗と太陽の下を並んで歩けないような暗闇が、私を待ち構えているみたいだ。
『いつ?いつまで待てば、沙祈の心の準備は、整うの』
棗の言う通り、いつになったら、私の覚悟は固まるんだろう。
出向先に馴染めたら?基盤ができたら?
出向期間を終えて、戻ってきたら?
……きっと、そうなったらまた、環境も状況も課題も変わってて……その度に、私は立ち止まる。
婚約のことも、後回しになり続ける。
「そもそも俺らが付き合ってきた3年半、落ち着いてたことなんてあった?逆だったはずだけど。
そういうの、一緒に乗り越えていくもんだろ」
「…………」
だからといって、じゃあ今すぐにと言われても、決断なんてできない。婚約をすることで、関係が壊れないという保証なんてないから。
私はただ、棗との日常を守りたいだけなのに。
……どうしてこんなに、ややこしくしてしまうんだろう。