ミライデザイン
黙る私に落とされた深いため息は、何処までも堕ちていってしまいそうで、胸に刺さった。
「……今の沙祈は、逃げてるようにしかみえない」
「……現実的に、考えてるだけだよ」
「じゃあ、俺がみてるミライがみえないって言うけど、それは、見ようとしてんの」
「……いつだって、みたいと思ってるよ」
私だって、ただ、しあわせだけを追いかけて進んでいきたい。大好きな人との明るいミライを信じてみたい。
棗と、実現させたい。
だからこそ、不安要素はゼロにしたいのに。
「……だけど、私は棗にはなれないの。
それだけはわかって」
……繋がらない、私達の想い。
それはいとも簡単に、止まることを知らない川にとけて流れていってしまうようだった。
私が吐き出したことについて、かみ砕くのに時間がかかった様子の棗は、ふいに、通りかかったタクシーを止めた。
「わるいけど、ちょっとあたま冷やして帰るわ。
沙祈は沙祈で、気をつけて帰って」
私を先に乗せてそう告げると。
運転手に私を託して見送ったあと、バッグミラー越しの棗は、まるで黒猫のように、夜の中にふらりと消えていってしまった。
別々の夜を歩き出してしまった私達を、誰でもいいから、だれか。…どうか。
絶対的なヒカリで導いてと。
みえない答えに、たしかな太陽を求めた。