ミライデザイン
棗の “いない“ 日常は、何度もその日を繰り返しているように長く。
だけど、明日には、明日こそは、この状況を変えなくちゃと思っているうちに、気づけは2ヶ月が経とうとしていた。
いなくなったと言っても、言葉通り、棗が何処かへいってしまった訳じゃない。
お互い橘社長の会社へ異動になったのだから、遠目からでも会社で見かけることだってある。
あの日深くなった隔たりを放っておけなくて。
会いにも行ったし、棗だって、私の家まで会いには来てくれた。
…それでも、重ならない私達の日常。
決まっていつも、間には仕事があるのだった。
「…沙祈さ、あんまり慎重になりすぎると、返って大切なもの失くしちゃうよ?」
すっかりヒカリを見失ってしまった私は、わざわざ今日しなくても良い仕事をバッグに詰めて、長年の友人である葉奈がフロントにいるオフィスまで足を運んでいた。
一目でなにかを察してくれた葉奈は、小休憩を使って、フロントから少し離れたソファへと誘導すると、黙って私の話を聞いてくれていて。
その上での、ひとこと。
「…どうしよう、葉奈」
失くしたくなんか、ないのに。
的を得た言葉をもらって顔を歪めた私を受け止めた、葉奈のやわらかい色をした瞳も、かすかにゆれたようにみえた。