ミライデザイン
墓穴を掘っていたことに気づいたときにはもう、棗に見透かされていた。
棗のことを相談してた、なんて言えるわけもなく、言葉の続かない私に、察した棗が背を向ける。
「……棗、まって」
愛想を尽かされる。
なにか、なんでもいいから繋ぎ止められるコトバをかけなくちゃと、頭を過った不安。
「七星、わりぃな。急用」
不安が大きくなって私を侵す前に、自分の荷物を持った棗が、万札をテーブルに置いたのがみえた。
「みてたんだから言わなくてもわかるわよ。
こっちはまた、いつでも」
「サンキュ。たすかる」
余裕な顔をして棗を急かす七星さんが、私をみて、キレイに口角をあげる。
その意味を考える隙もなく、ソバまできていた棗が、少し痛いくらいに私の手首をつかんだ。
「帰るぞ、沙祈」
「えっ、あ、ちょっと……!」
私宛てにいわれたはずなのに、私とは一瞬しか合わなかった瞳。
風のような勢いで私の手を引いて、先に歩き出した棗は、橘社長の方をみているようで。自分のことなのに、なんだか取り残されたような気分になる。
棗の視線に気づいたらしい橘社長が、棗と私にすれ違う前に、私の方に視線を送った。
「…………?」
「……沙祈くん、ダメだったら私のとこにおいで。
いつでも、ね?」
「…………えっ?」