ミライデザイン
「…あ。仕事、残ってるんだった」
棗とのしあわせな時間を過ごしてベッドで余韻をたのしんでいた時、わすれてはいけないことを思い出した。
話しながら服を身にまとっていく私の隣で、棗がむくりと体を起こす。
「え、仕事すんの?今から?」
まだ14時になる前なのに棗が今から?と聞いたのは、美術館にいこうと、3週間前から約束をしていたから。
「30分で終わらせるから。明日朝イチで打ち合わせが入っちゃって。数字出して要点だけまとめたいの」
部署こそ違っても同じ会社だから、土日休みは一緒。
だけど、デザインの仕事をしている棗は、休みの日もデザインをしたりクライアントに会ったりイベントに足を運んだり。
今日みたいに1日時間が合うことはそんなに多くない。多くて月に3日くらい。
そんな中の貴重な1日だってことはわかってるけど、同じ会社内で付き合ってる分、仕事は絶対に完璧でいなくちゃ。
棗としあわせなミライをつなげていく為に、大切なコトだから。
“お願い” というように顔の前で両手を合わせると、棗の猫みたいな顔が、ちょっと不機嫌。
頭をぐしゃぐしゃっとしてみせたけど、猫っ毛でサラサラした棗の髪は絡まらずに、その目にかかる。
「もうさ、結婚するか」
「…は?」
「だから、結婚」