ミライデザイン
「えー、私だったら全然足りないけどな。
同棲してたって夫婦になったって、一緒に暮らしてればそれで満足なんてことないもん。
普通にデートしたい」
お昼休み。仕事の用事で、久しぶりに九条社長の会社を訪れることになったから、せっかくだしと、葉奈と時間を合わせてランチに外へと出ていた。
簡単に近況報告をしたあとでの、葉奈の率直な意見。
ロコモコ丼をすくいながら素直に自分の気持ちを口にする葉奈は、羨ましいくらいに可愛い表情をしていて。
「本当は沙祈ちゃんもそっち派じゃない?」
私もそんな風にいえたのなら、現実的に考えて難しい願いだって叶うのかな。と。
思っていたら、北斗さんに簡単に見抜かれてしまった。
葉奈と2人でランチに向かうところで遭遇して、当たり前のように合流した北斗さん。
目の前で吸い上げられていくメロンソーダは、シュワシュワと炭酸を弾きながら、もう3分の1になっていた。
イキイキとしてみえるそれを目で追って、ため息をつく。
心の中で主張し続ける想いは、まるで新鮮な炭酸のように、消えてはくれないみたいだから。
「それは、もう。ずっと愛し愛されていたいですし。2人での思い出をたくさん作り続けたい。
棗といきたいところばかり溢れていくけど、お互い仕事以外の時間が確保できなくて無理なんです、悲しいことに」
テーブルに突っ伏したくなる気持ちをどうにか踏みとどまれたのは、今が休日の昼下がりなどではなく、仕事の休憩中という事実。
一応、人事部という立場上、外とはいえ誰かにみられていたらと思うと、姿勢だけは崩せなかった。
「大体そういう時だよね。誰かにもってかれるの」
「やめて、北斗さん。恐ろしいこと言わないでください」
追い討ちをかけるように刺された危機に、北斗さんと同じ顔をしたヒトが浮かんでしまう。
「棗くんのゾッコン具合からして可能性は低いかもしれないけど、棗くんも男だからねぇ。オンナの方から迫られたら危ないかも?」