ミライデザイン
「……これは、無理矢理にでも作るしかないな、時間」
北斗さんの問いかけに答えもせずに、目を伏せて口を噤んだ私に、指を鳴らして提案をくれる。
音に呼ばれて目線を向けると、お手本のようなウィンクがひとつ。
「……多分、私も棗も、スケジュール20分も空きないですよ?」
「もしかして、特権つかっちゃうんだ?」
「……特権?」
って、なんのこと?
葉奈の指摘に口角をあげる北斗さん。
わかっていない私一人を置いて、北斗さんも葉奈も、なんだか愉しげに目を三日月にしている。
「ねぇ、沙祈ちゃん。俺の父親は?」
「そんなの、九条社長ですよね……って。
え?まさか?」
九条社長にうまいことでも言って調整する、みたいなこと?
最後まで口にした訳じゃないのに、読み取った北斗さんが自慢げに頷く。
「そのまさか。1日くらいの調整は任せてよ」
「1日くらいって。他社との兼ね合いもあるんですけど……」
「どちらかといえば得意分野だね」
「んー……」
何の問題もないように軽やかに言われても、私の頭の中では、どうやったって、スケジュールが成り立たない。
九条社長に頼んだところで、今は橘社長の会社にいる訳だし。難しいんじゃないかと思う。
自分だけの仕事ならまだいい。
そうじゃないから、お互いに時間をつくれずにいるのだ。
「いいじゃん、沙祈。任せてみようよ?
たまには甘えてみるのも必要だと思うなぁ。
放っておいたら、一生平行線なままな予感もするし」