ミライデザイン
「一生平行線…」
永遠に交わることのないその線は、人間関係に置き換えると、なんだかとても虚しい。
適度な距離を保ち続けるという意味にだってなれたはずなのに、そうはなれなかったその言葉は、数ヶ月前まで、結婚に対する想いが交わらなかった私と棗を思い出させる。
「わかるわー、それ。沙祈ちゃん受け身だしなぁ。
仕事落ち着いたらって思ってると思うけど、待ってるだけの人に機会はやってこないからね?」
「ねぇ?今のままじゃ、同棲をはじめた目的だって曖昧になっちゃうよ?」
「……っ」
さらっと痛いところをついてきた北斗さんと葉奈に、返す言葉がない。
同棲をはじめた目的は、結婚に向かうため。
大切な棗と、この先の人生を一緒に歩いていくために、欠かせないことだと思って決めたけど、今のままじゃ……。
足元をみつめながら、先に続くミライを想像をして、唇をかみしめた。
「ということで決まりね!予約も含めてプラン立てるわ!」
ようやく進めた1歩を、無駄にしたくはないし、なにより、棗となぁなぁになってしまうのは、イヤ。
だからやっぱり、北斗さんの提案に乗るべきなんだと、意志を固めたのとほぼ同時。
またしても指を鳴らしたのは、北斗さんで。メロンソーダに刺さった赤いストローを口の端で咥えながら、iPhoneでスケジュールアプリを開いている。
「えっ、いいですよプランは。棗と話して決めるから」
「お願いしちゃえば?北斗さんのプランニング、たのしそうだよ?」
「間違いなく、2人の愛情が深まることを保証するね」
白い歯を目眩がする程にのぞかせて、ピースサインなんてしてみせる北斗さんと、顎の下で指を組みながら、にっこりと頷いてみせる葉奈。
断れない雰囲気のなか、どうなるか先がみえなくても、委ねてみてもいいかもと、思った。