ミライデザイン
「橘社長のことは好きだけど、沙祈はダメですよ?
代わりに誰か、いい人紹介してあげますから。
タイプそうな子、探すの任せてください」
「あ、それ俺も頼もっかな」
「えー?北斗さんって恋愛する気あったんですか?
なんとなく、北斗さんに紹介するのはヤだなぁ」
「北斗は、好きにさえなれば一途だよ。
俺はいいから、北斗に紹介してあげてよ」
会話が進んでいく中で、まずは、私の答えを、橘社長に伝えることから始めなくちゃと思う。
できるだけ、早めに。
「ま、とにかく今日はたのしも!沙祈。
その代わり、橘社長と北斗さん、沙祈と棗くん、もちろん私は一樹とのペアで。夕方以降は、解散で。
ちゃんと、2人きりにしてくださいね?」
迷うことなくペアを作っていく葉奈が、最後に一樹さんの腕に自分のそれを絡ませて、いたずらに笑う。
葉奈がそれを、当たり前のようにできるのは。
多くを語らない一樹さんが、嬉しそうに、微笑んでいるのは。
きっと2人とも、自分の感情から逃げずに、嘘をつかずに。真っ直ぐに、向き合ってきたからだ。
「あの…、橘社長。今少しだけ、よろしいですか?」
……私も、棗がくる前に言わなくちゃ。
全然そういう雰囲気じゃなかったのに、かしこまった音を出した私に、みんなの視線が集まる。
一歩を踏み出す瞬間は、いつだって、震えるほどに怖いけど、大切なものはそうやって、掴んでいくんだと思う。
「もちろん。せっかくだからお茶する時間くらいはもらってもいいかな?
北斗、伊吹くんが来たらよろしく頼むよ」