ミライデザイン
言えない言葉を代弁するように、提案してくれた橘社長の声は、いつも通り、落ち着いて聞こえた。
背後から支えてくれる手は大きくて、頼もしい。
気をしっかり持てと、言われてるような気がした。
「申し訳ないですが、婚約では…
それに、事故に遭った時に傍にいらした方が付き添っていますから。それ以上は…」
「それって……」
「七星か」
確信をつく橘社長の呟きに拳を握った。
……こういう時、どうして七星さんは棗の傍にいられるんだろう。
確かにたまたま。事故に遭ったときに一緒にいた。
それだけのことなのに、家族以外は踏み込めない向こう側に、七星さんはいる。
私よりも、棗の近くにいられる。
検査室に入って行く前の顔だって……。
彼女であるはずの私が、知らないのに。
家族以外には与えられなかった権利を持っている七星さんが、羨ましいと思ってしまう。
今、そんなことを考えるなんて、不謹慎だと分かっていても。
「七星がついてるから、大丈夫だよ」
俯いて言葉を発しなくなった私を心配して、北斗さんが掛けてくれる言葉も、今は、心の中に大きなシミをつくるだけ。
棗の、そばにいたい。
笑顔に会いたい。
心配と不安。七星さんに対する想いが複雑に交錯する先で、最後にはそれが残る。
ただ、無事でさえいてくれれば。