ミライデザイン
からからに乾いている喉。
それでも、息もできずに踏み入れた先で、上半身だけ体を起こした棗が、こちらをみていた。
「俺に会う前に、着替え取り行くはないだろ」
目が合うなり、放たれた言葉と、むくれてみせる表情を受け取ってから理解するまでに、数分かかる。
病室の前でしていた私達の会話は、棗にも聞こえていたんだろう。
「待ちぼうけじゃん、俺」
そんな私を急かすように、ベッドを叩いて、自分の隣へと、棗は呼ぶけれど。
頬には確かにすり傷があって。骨折もしてしまったのか、腕には包帯が巻かれている。
それなのに、なんてことない顔をして、いつもの棗と変わらない雰囲気でいじけてみせるから、抑え堪えていたものがあふれてしまう。
「もう、心配させておいて……
なに呑気なこといってるのよ、ばか」
とりあえず何より、生きていてくれてよかったと。
安心を得たはずなのに、自分の目でみて確信を持ってもまだ、震えが止まらない。
むしろ気が抜けたのか、増していく震えに、余計に感情が煽られていく。
それほどにこわかった。
絶望だった。
棗になにかあったらと思うと。
2度と、会えなくなってしまうかもしれないと思うと。
こわくてたまらなかった。
1粒流れてしまえば、待っている間に膨らみ広がっていった不安や複雑な想いが、次から次へと止まらなくて。
「……そんな離れたとこで泣かれると、涙も吹けないんだけど」
「……っ」
自分の手で雑に涙を拭う私を、棗が手招きで呼ぶ。
ぬくもりを感じるそのトーンに、顔がゆがんだ。