ミライデザイン
傍までいくと、はやくと急かすように、棗の手が伸びてきて、不恰好に、だけどやさしく引き寄せられる。
「……心配かけてわるかったよ」
私の頭を包む大きな手。
息をすいこむと感じる棗のにおいに、棗が生きていることを実感する。
本当は、強く抱きしめ返したい。
心配がすべて消えるほど。
だけど、包帯で固定された右手の存在をお腹あたりに感じて、棗に預けていた体を起こした。
「腕、痛くない?検査の結果は?
今後の私生活への影響は……命に別条は、ないんだよね?」
嘘を見落とさないように、真っ直ぐ棗を捉える。
私は真剣に聞いてるのに、棗は笑った。
「尋問みたいになってる」
「……ねぇ、反省してる?
猫が助かった代わりに、棗に何かあったら、私……」
「猫のこと、許せなかった?」
「すぐそうやってあしらう……」
顔を背けてベッドに腰を下ろした私の手を、棗がそっとすくって包み込む。
つられるように棗の方を向くと、文句が溜まっていく私とは裏腹に、満足げな笑み。
「頭打ったから念の為に検査しただけで、今日一日は泊まることになったけど。骨折以外はなんともない。
……ただ、利き手だから、退院後は沙祈の助けないとムリ」
言いながら、まだ涙のあとが残る頬をなでてくるやさしさは、ずるい。
私が心配してるほど、棗は重く捉えてなくて、それに腹が立つのに、ゆるせてしまうんだから。
……叶える代わりに、それならと。
棗のお願いの対価として浮かんだのは、第三者だからという理由で、待たされてる間に固まっていった、確かな意志。
「……いくらだって棗の手になる。
必要なら、耳にだって、目にだってなるよ。
……その代わり、私と、結婚して」
「え、」
告げたのは、確かな意志。
今まで逃げてきてばかりいた、ミライだけど。
今は、それを掴みたい。
まもるためには、必要なんだと知ったから。
……離したくないの。