ミライデザイン
「…変わってるじゃん、もうすでに」
棗は、なにも変わらないというけど。
なにかと都合がいいから結婚をしようと言う時点で、すでに大切なにかが行方不明だよ。
変わっちゃった。
…気づいてる?棗。
「…なにが?」
ベッドの上で上半身だけ起こしたまま眉を寄せる棗に、期待をした自分が情けない。
こみ上げてくるものが溢れださない内に、1人になりたくて、散らばっている棗の服を拾いあげていく。
「…もう今日は、帰って」
「は?」
「お願い」
集めた洋服を差し出して棗をみると、水分に邪魔される視界の中で、不満たっぷりな顔が歪む。
…だから、結婚はイヤなの。
たかが4文字の言葉で、大きなことが変わってしまった。
大事な "なにか" が変わってしまった。
「…今のが答えとか、思ってないから。
沙祈こそ、ちゃんと考えてみて。俺らのミライについて」
聞き慣れたそれより慎重な声。
聞こえてるのに聞こえてないフリをして、新鮮な外の空気へと手を伸ばした。