ミライデザイン
「…は?」
「え、なんて…?」
可愛くポーズをつけながら放たれる葉奈の言葉が、まるで呪文のように、一切頭に入ってこない。
ただ、私にいわれたんだってことは、葉奈に向けられた瞳でわかった。
そして自覚もあった。
数ヶ月前の私は、確かに “結婚“ というミライを、怖がっていたから。
「まって葉奈ちゃん。みんなに分かるように説明して欲しい」
大勢いるときはあまり発言をしない一樹さんが、そっと葉奈の肩に手を置いた。
私も、そうしてほしいと頷いてみせる。
「だからつまり、沙祈がいつまでも結婚を渋ってるから、葉っぱかけたってことでしょ?
大好きな棗くんが、七星さんにとられると思わせた。
でも沙祈だけだと足りないから、棗くんにアクション起こしてもらう為に、橘社長が沙祈のことを好きなフリした、違うかな?
合ってると思うんだけど」
淡々と推理を打ち明けていく葉奈の言葉に、衝撃を受けながらも、ひとつひとつ、起きてきた事柄に当てはめていく。
確かに私は、結婚を渋ってた。
と言うより、したくないと思ってた。
結婚は、永遠の契約を交わす代わりに、大切なキモチを奪っていくものだと思ってたから。
それが、棗の異動を機に、少しずつ変わっていって。
棗の隣に居られることが、当たり前じゃないこと。
お互いの大切にしたいミライが、重なっていること。
結婚するから、大切なものを失う訳ではないことを、知った。
自分以外のダレカの横で、何よりも愛おしいヒトが笑っていると言う、痺れるような辛さや、
最期かもしれないその時に、家族ではない、それだけの理由で、隣にいくことさえ叶わない、残酷さまで。
私は、思い知ったんだ。
……それは、そう思うように、仕向けられていたってことなの?