ミライデザイン
声をたどった先でみつけたのは、社長、というよりは、父親を覗かせるような、九条社長の笑み。
穏やかなものではあったけど、ふたごの悪戯なソレに、とてもよく似ていた。
「え?」
からかいすぎ、って、どういう意味?
からかわれた、らしいことを探そうと、必死で頭を働かせる。
「つい、いじわるしちゃってすまないね。
実際のところ、多少の愚痴はあったけど、異動願いが出るほどではないよ」
そんな私に、すまないねと言いながら、全く申し訳なさそうにみえない九条社長。
「そ!沙祈ちゃんと話してると、なつめんからの視線がつよくてやりにくいから、はやく結婚しちゃえよーって感じのね?ライトなやつ。
愛あるネタ?みたいな」
「伊吹自身は、隠してるつもりだったみたいだけど。結構な人数の社員が、伊吹のモヤモヤにはずっと気づいてたんだからね?」
「それで、2人を結婚させるためにはどうするかを考えた結果、普通だと全く面白くないからと、今回の作戦になったみたいだね」
九条社長に続く、ふたごの言葉を必死で追いかけていると、七星さんの横でニコニコと話を聞いていた橘社長がまとめてくれる。
「九条さんや北斗、七星に話を聞いて、非常に興味深かったから、俺も参加してみたんだ」
「ノリノリでね」なんて合いの手が、北斗さんから入って、七星さんが「北斗もね」という。
そんなやり取りを背景に、暴露された事実を頭の中で整理して、噛み砕いて……
言いたいことは、ひとつ。
「あんたたち、会社使ってなにやってんだよ」
思っても口に出せない想いは、呆れというため息にのせて、棗が伝えてくれたのだった。