ミライデザイン
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ーー…
「…それで、棗くんが服着てるすきに家出てきちゃったってこと?」
棗とのことを一通り話し終えると、葉奈(はな)は、アイスコーヒーをくるくると回していたストローの手を止めた。
くるんとカールした睫毛。アイメイクやゆるふわなミディアムヘアーもピンクベージュで統一されているのに、あまくない表情。
「だって棗も合鍵もってるから」
棗が服を着てる僅かな時間でも、あの空間にいられなかった。1人で解決できる気もしなかった。
誰かに話して、解決できることじゃないかもしれなくても。葉奈に聞いてほしかった。
高校から一緒の葉奈に。
だから、部屋を出てすぐに電話した。
貴重な日曜日。1カ月前の4月に付き合ったばかりの一樹(いつき)さんと一緒にいたのに、おいでよって家に呼んでくれた葉奈。
一樹さんも仕事進めておくから気にしないでと、笑って迎え入れてくれた。今は、外に出てるみたい。
「そういう問題じゃなくない?」
棗を置いて外に出てきたことを、合鍵もってるからいいと言った私にため息までついて、葉奈は不服そう。
でもよくみると、眉毛が下がっていてどことなく悲しそうにもみえる。
私まで、ちくっとした。
「なんで、返事もしないで出てきちゃったの?
棗くんと別れたい訳じゃないんでしょ?」