ミライデザイン




「踊らされる、って、こういうことを言うんだね」


一連の種明かしを終えると、「邪魔者達は早々に退散します」という北斗さんの一言で、みんなが手を振りながら扉の向こうへと消えていった。



残された病室で、棗とふたり。


急に静かになった部屋の中から、夕方に向かっていく空がみえる。




やさしく色を染めていく姿をみながら、マジックのようなふたごの企みを振り返って、不思議と笑ってしまう。



今回のことを聞いてすぐは、空いた口が元に戻らないくらいにびっくりしたし、呆れたけれど。


棗のヘッドハンティングも、私の出向も、本当に必要なものみたいだし、お陰様で、という事実があることも否定はできないから、大目にみることにした。




「あいつらの手借りなくたって、俺は沙祈と結婚してたけど」


「…もしかして、ちょっと妬いてる?」




けれど棗は、私とは違うみたいで、何となく、声のトーンに棘を感じて。他人が聞いたらくすぐったくなるような質問をしてみる。


窓から入り込んでくる穏やかなオレンジ色に包まれていく棗は、未だに少し、納得のいかない顔をしていて。


そんな表情に、ゆるんでしまう口元。




「いいから、こっち」




肯定も否定もしない棗は、ベッドの右側に寄ると、空いた左側へ私を誘う。


愛しいなぁ、なんて微笑んで、ぽんぽんと叩かれた空間へ体を滑らせると、迷わず繋がれた右手。


腰くらいまでを覆った布団からも、棗のぬくもりを感じた。




「私、踊らされてよかったのかもって、思ってるよ」





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