ミライデザイン
「棗、一回休憩したら?」
「あー、沙祈」
いつもは、朝に弱い棗が、私よりはやく起きることなんてない。
それなのに、今日は珍しく、私が目を覚ましたときに棗はもう起きていて、なにやらパソコンに向かって作業をしていた。
私が起きたことにも気づかないくらいの集中力で。
急ぎの仕事なのかなと、しばらく眺めていたけど、退院したばかりのギブスで固定された右手は使いにくそうだし、負担をかけないでほしくて、声を掛けたのだった。
「コーヒー、持ってきてくれたんだ?」
気づいてパソコンから私へと視線を運ばせた棗は、黒縁のブルーライトカット眼鏡を外すと、手招きで私を呼ぶ。
「じゃないと日が暮れるまで没頭してそうだったから」
「集中力おばけの沙祈に、そんなこと言われる日がくるとは」
傍までいくと、コーヒーが入った2つのマグカップは、トレイごと、デスクの上に置くようにと、棗の左手が伝えてくる。
トントンと、デスクを叩く指の言う通りにすると、ふわりと引き寄せられる腰。
「せっかくの休みなのに、何をそんなに根詰めてやってるの?」
「ん」
誘導されるままに棗の両足の間に座ると、まるで、待ち焦がれていたみたいに、後ろから包み込まれた。
私の肩には、当たり前のように棗の顔がのっていて、棗の息づかいに、鼓膜をくすぐられる。
棗の仕草や視線を追いかけて、みつけたパソコンのディスプレイ。
「これって……?」