ミライデザイン
今は右手が使えないからと、左手の方へとまわされたマウスを棗が操作して、表示された画面。
……息をのまずには、いられなかった。
「沙祈に、似合うと思って」
だってそこには、純白なドレスのデザイン。
シンプルだけど女性らしく、キレイなマーメイドラインは、私の好みそのもので。
棗がなぜ、このデザインを、退院明けの休日の日に、夢中になって仕上げていたのか、何のために、私に見せてくれているのか、理解が追いつかない。
「一応、専門とか仕事関係のツテ辿れば、つくれるんだけど、ど?
……って、あれ?まさか、気に入らない感じ?」
「……えっと、そういう訳じゃないんだけど」
モノゴトが、私を置いて進むから、後ろからひょっこり顔を覗いてくる棗に、首を左右に振るものの、聞きたいことは何ひとつとしてカタチにならない。
「沙祈が他に着たいのあるならそれでいいけど」
「えっ、ないよ。着れるなら、これが着たい!」
猛スピードで状況の整理をしている私を待たずに、時間をかけてつくったというデザイン画をデリートしようとするから、あわてて棗の手をマウスから引き離す。
「ま、ナイはナイよな。今までウェディングドレスなんてみてこなかっただろうし?」
念には念をと、マウスまでしっかり自分の手の中におさめることには成功したけど。
そんな私に対して、なぜだかからかいモードに入ってしまった棗は、ニヤニヤしながら、ちょっといじわるなことを言う。
……たしかに今まで、ウェディングドレスなんて一生関係のないものだと思って、みてはこなかったけど。
「というか、こんなのみせられたら、他にどれだけみたって、これ以上に着たいドレスなんてないよ」
棗が私を想ってデザインしてくれたモノがあるのなら、それ以上のモノなんてない。
棗がくれるモノ全てが、私にとってはベストなんだから。