ミライデザイン
「あ、ねぇ、一個確認しておきたいんだけど」
「ん?」
キスがしやすいようにか、いつの間にか棗の右足の上に乗せられていた私は、ふと、浮かんでしまった疑問に、棗の唇を指で制した。
棗はちょっとだけ物足りなさそうな顔をしたけど、私が疑問を口にすれば、一度止まって、耳を傾けてくれる。
気ままな黒猫みたいな棗なのに、そういうところは、ちゃんと、合わせてくれるヒト。
「あのドレスのデザインって、棗が私との結婚式のためにイメージ組んでくれたってことだよね?」
首を傾げた私に、棗はわらって。
右側の足の上で、バランスを取るために棗のTシャツを掴んでいた私を、後ろに倒れられたら支えられないからと、反対側に誘導する。
「他に、沙祈をイメージしてウェディングドレスをデザインする理由は?」
度々、私をからかってくる棗だけど、いつだって変わらない棗のやさしさが、あたたかい。
呼吸するように、好きだと思うの。
「そしたらねぇ、棗のは、私も一緒に決めたいな」
棗が魅せてくれたディスプレイには、まだ、ウェディングドレスのみだから。
似てるところも、少し違うところも、同じところもつくって、お似合いな、タキシードを並べたい。
棗のためにあるような。
ふたりだけの。