戦略的心の奪取計画及びその結果

後輩の女の子たちからはそのように言われて、少し照れくさかった。
でも肝心の彼は外回りらしく、私は1日会えずじまいだった。

夕方。いつものように退社したが、後輩たちからの評判が良かったからか、
もっともっと変わりたいと思うようになった。

「髪型なんかも、変えてみようかな」

今週末に傷んだ髪を少し切り、トリートメントをしてもらおう。
バレッタでも買ってヘアアレンジでもしてみようかな。
そんな浮かれた脳で駅の近くのショッピングモールへ向かう。

『華音さん?』
「、!川村くん?」
『びっくりした、いつもと雰囲気違うから気づかないとこだったよ』

おつかれ、と私に笑いかけてきたのは会いたくてしょうがない彼だった。

『コンタクトにしたの?』
「そう、メガネが壊れちゃって」
『そうだったんだ。メガネ見に来たの?』
「あ、うん。でも結局いいのなくって。
 今日つけてみてコンタクトも快適だし
 もうずっとコンタクトにしようかなって思ってたの笑」
『うん、メガネ姿も素敵だけど、
 メガネかけてない華音さんもとっても似合ってるよ?』

全く嘘のないように聞こえるその言葉が、
私を舞い上がらせる。
これだけでも十分だったのに。

『あ、ねぇこの後空いてたりする?ご飯、行かない?』
「え、行く!行きたい!」
『ふふ、じゃあ決まりね。行こっか』

私は彼の隣に肩を並べて歩いていた。
彼が選んだのは私がとても好きなイタリアン料理。
俺ここのピザめっちゃ好きでさ、なんて嬉しそうに話す彼に胸が高鳴った。
それからは、本に書いてあった戦略を沢山披露した
___といっても彼は気づいてないんだろうけど___。
彼が水を飲むタイミングで一緒に水を飲み、彼の目を見て笑い、
メガネではできなかった上目遣いなども、お酒の力を借りて挑戦してみた。
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