戦略的心の奪取計画及びその結果

あくまで惚れたのはこちらが先だが、
華音の頭が俺でいっぱいになるくらい俺に片思いをしてほしい。
誰も考えつかないような計画に久しぶりに心を弾ませながらも、
帰りに書店で色々な駆け引き術を学ぶ本を手に取った。
そして沢山勉強をし、その都度実践した。

すると彼女は、みるみるうちに俺にハマっていくように見えた。
彼女が気づかないうちに俺の手のひらで踊らされていて、
彼女が気づかないうちに俺に片思いさせられているんだ。

『華音さん?』
「あぁ、ごめんなさい。どうしたの?」
『この資料、次の会議に使うやつだからと思って届けに来たんだけど、体調でも悪いの?』
「ううん、ちょっとぼーっとしてただけ」
『そっか、じゃあまた』
「うん、また」

彼女が可笑しくて、可愛くて、愛おしくてしょうがなかった。

ストーカー行為には至らないまでも、彼女の家から徒歩20分圏内に住み、
彼女の生活圏内を把握し、ごみの日を把握し、彼女のあらゆる所から情報を得た。
ある日彼女の出したごみの中から、レシートが2つ見つかった。
コンタクトのレシートと、大量に買われた書籍たち。
その大半は俺が読んだような恋愛の本ばかりで、俺は急いでその本を読み漁った。
コンタクトは、きっとイメチェン用だろう。
明日が外回りなのは残念だが、
生活圏内を把握している彼女の行動を推測し、
一か八かで待ち伏せしてみるのもありだと思った。

『華音さん?』
「、!川村くん?」
『びっくりした、いつもと雰囲気違うから気づかないとこだったよ』

次の日の俺は、賭けに勝った。
買い物をしようとしていたコンタクト姿の華音を見つけ、慌てて声をかけた。

『コンタクトにしたの?』
「そう、メガネが壊れちゃって」
『そうだったんだ。メガネ見に来たの?』
「あ、うん。でも結局いいのなくって。
今日つけてみてコンタクトも快適だし
もうずっとコンタクトにしようかなって思ってたの笑」
『うん、メガネ姿も素敵だけど、
メガネかけてない華音さんとっても似合ってるよ?』
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