君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
靴を乱暴に脱ぎ捨てると、明らかに苛立っている足取りでリビングへと消えた。


中野 神弥の靴を揃えると、私も後を追う。


と。




「《よお。》」


「や、八神 架琉!?」




意地の悪そうな笑みを浮かべている八神 架琉の正面に立ち、中野 神弥はバンとテーブルを右手で叩いた。




「何、勝手に他人ん家に上がってんだよ。」


「《勝手?》」


「勝手だろ。俺の許可なしに…つか、お前どうやって入ったんだよ。」




中野 神弥が問うと、八神 架琉は何かをヒラつかせた。




「それ…っ」


「《そ。カードキー。神弥の祖父さんに貰った。》」


「は?…あのクソジジイ…」


「《孫が心配なんだろーよ。君にも頼むって渡されたし。》」


「架琉に頼んでどうするんだよ…」




はあ、と大きな溜め息を吐く。
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