君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
「何、眉間に皺寄せてんだよ。」





笑いを含んだ声に振り返ると、お風呂上りの中野 神弥がタオルを頭にのせて立っていた。





「あんた、どんな歌を歌ってたの?」


「は?」


「昔、八神 架琉と組んで歌ってたんでしょ?」


「あぁ…」


「もしかして、切ないラブソング?」





聞くと、中野 神弥は口元に笑みを浮かべて私の隣に腰を下ろす。


2人の重みでソファーが少しへこむ。





「歌ってやろうか?」





あ。


また上から口調だし。


でもまぁ、中野 神弥の歌は聴きたいし。


ここは大人な私が寛大に受け入れてやろう。←何様だ






「うん、歌って?」


「…え?」






あー。


こいつ、まさか私が素直に「うん」て言うはずないって思ってたな。
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