君は無垢なフリをして───本当は野獣。
「花菜。」
「何。」
「もう寝た?」
「寝てたら返事しないでしょ。」
「ははっ。だよな。」
何故か私は神弥のベッドの上に居て、私の隣には神弥がいる。
神弥の息遣いが部屋に響いて、ドキドキする。
「俺さぁ…怖いんだ。」
「怖い?」
ゆっくりと私の腰に手を回し、ぎゅっと引き寄せる。
「花菜が…俺よりアイツを選ぶんじゃないかって。」
「だから、さっき…」
「分かってる!けど、怖いんだ!」
いつもあまり声を荒げない神弥が、声を荒げる。
「花菜が俺を置いて行くことを考えるだけで、寂しくて泣きそうになる。」
「神弥…」
そっか…
お父さんたちに置いて行かれて寂しかったって、言ってたよね…。
だから私が居なくなるかもって深く考えちゃうんだ。
「大丈夫だよ、神弥。私は、どこにも行かない。ずっと神弥の傍にいる。」
そう言って体ごと神弥の方に顔を向けると、神弥を抱き締めて、キスをした。