君は無垢なフリをして───本当は野獣。
11
「もー、お兄ちゃん、口が悪ーい。」
よっこいしょ、と八神 架琉から退いた女の子は、そう言って口を尖らせる。
「《そんな顔するな、気色悪ぃ。》」
八神 架琉も立ち上がると、女の子に罵声を飛ばす。
目の前の女の子は、まるでお人形。
クリッとした大きな瞳に、緩いふわふわウェーブ。
なのに八神 架琉は気色悪いと罵声を飛ばすなんて…
「あの、架琉くん。お兄ちゃんって…?」
綾香が不思議そうに問う。
すると八神 架琉は心底嫌そうに溜め息を吐くと、口を開く。
「《こいつは八神 愛瑠。4歳下の高1で俺の……妹。》」