君は無垢なフリをして───本当は野獣。
…今、私は迷っている。
昨日ここに入ったばかりなのに「ただいま。」と平然として入るべきか。
ここはまだ中野 神弥ともあまり親しくないからということで、「お邪魔します。」と入るべきか…。
―――――――あれから、中野 神弥と会うことはなく。
食堂で綾香と別れ、いつも通りの日程を過ごした。
昼間、王子キャラの中野 神弥を見たせいか、何だか入りづらい。
「――…何やってんだよ、アンタ。」
一人で頭を抱える私の背後から、呆れたような声が届く。
振り返ると、コンビニ袋片手にダルそうに立つ中野 神弥の姿。
…何故か髪の毛から水が滴り、微かに湯気が立ち上っている。
「あ、えーっとその…」
「勝手に上がればいいだろ。今日からアンタの家でもあるんだし。」
「そーだね、あはは…」
…このクソガキ。
そんなに嫌そうに言わなくてもいいでしょ!