君は無垢なフリをして​───本当は野獣。








…今、私は迷っている。


昨日ここに入ったばかりなのに「ただいま。」と平然として入るべきか。


ここはまだ中野 神弥ともあまり親しくないからということで、「お邪魔します。」と入るべきか…。


―――――――あれから、中野 神弥と会うことはなく。


食堂で綾香と別れ、いつも通りの日程を過ごした。


昼間、王子キャラの中野 神弥を見たせいか、何だか入りづらい。



「――…何やってんだよ、アンタ。」



一人で頭を抱える私の背後から、(あき)れたような声が届く。


振り返ると、コンビニ袋片手にダルそうに立つ中野 神弥の姿。


…何故か髪の毛から水が(したた)り、微かに湯気が立ち上っている。



「あ、えーっとその…」


「勝手に上がればいいだろ。今日からアンタの家でもあるんだし。」


「そーだね、あはは…」



…このクソガキ。


そんなに嫌そうに言わなくてもいいでしょ!
< 26 / 385 >

この作品をシェア

pagetop