君は無垢なフリをして───本当は野獣。
「ねーぇ?中野くん。」
「何。」
「私、中野くん」
「一度だけって言ってあるだろ。」
もう…何人目かも分からない、帝を虐めていたという女。
大概が俺の本命になりたいと言い始めるから、この女の言いたいこともすぐに分かった。
図星をつかれた女は、頬を膨らませる。
「どうしてダメなの?今はフリーなんでしょ?」
どうしてって…
何で、大切な奴を傷付けた奴と付き合える?
俺は…そんなに神経、図太くねーし。
「……さぁな。」
それに…
あの日から、あの人が頭の中に居て…消えないんだ。
正確には、あの人の笑顔。
大好きだった帝の笑顔に、少しだけ似ているような気がするんだ。