君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
本当は嬉しいのに。

勝手に恋焦がれて煮詰められた欲望が頭を出して。

そばにいるだけで押し倒しそうになる。

だから追い返そうとすれば、もう帰る場所はないと言う。


……あのクソジジイ。


俺の気持ちを知りもしねーで…



「いいぜ、住まわせてやっても。」



可愛くない言い回しをして、照れ隠し。


まるで子供だ。


けど、仕方ないだろう?


気を抜けば、帝への罪滅ぼしを忘れて…


この人を――花菜を、求めてしまいそうなんだから。

求めれば最後…また置いてきぼりにされるのに、怯えなければならないのだから。
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