君は無垢なフリをして───本当は野獣。
―――「神弥!」
呼ぶと、驚いた表情で私を見る。
このところ、神弥はいつもこんな感じで。
聞いてないっていうよりは、聞こえていないっていう方がしっくりくる。
……上の空、ってやつかな。
「神弥。一人で抱え込まないで。何の為に私はあんたの傍に居るの。」
「花菜…」
私を見上げる神弥の顔は、今にも泣きそうな顔。
一体、神弥は何を悩んでいるの…?
「神…――」
――ピーンポーン…
――《ただいま、神弥。》
《寂しがって泣いているかもしれないからと、先にお前に会いに来てやったぞ。》
インターホンのスピーカーから流れる2つの声。
落ち着いた声色で、声から男の人と女の人だと分かる。
「んなくっちゃべってねーで上がってこいよ。」