君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
神弥が返せば、クスッという笑い声を最後にスピーカーは音を出すことを止めた。

神弥は誰だか分かってるみたいだけど、私はどんな顔でいればいいのかな。



「あんま力まなくていーよ。親父と母さんだから。」

「えぇ?!」



いやいやいや!


そこは力まなきゃおかしいでしょ!


というか力んじゃうでしょ!?



「親父はアレだからピンポンとか鳴らさず入ってくるから。」



アレ?


アレって何?!



「ちょっと待って!私、こんな格好――…」











――「元気にしていたか、神弥。」



心地よい低音ボイス。


艶やかでサラサラな黒髪に、神弥よりも高い背丈。


そして…神弥とはまた違った綺麗な顔。


美人、という言葉が服を着て歩いていると言っても過言ではないような人――…
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