君は無垢なフリをして​───本当は野獣。

｢ごめんなさい、いきなりお邪魔しちゃって。｣



お父さんに食って掛かる神弥から視線を私に向けると、そう言って頭を下げる神弥のお母さん。



｢いえ、そんな！私こそ、初めてお会いするのに何も用意してなくて…｣


｢ふふっ。そんなの気にしないで？…狼がね、ずっと神弥を心配してて。やっと仕事が一段落ついたから、一時帰宅したの。｣



そういえば、神弥のご両親は海外で仕事してたんだっけ……？



｢お父さんから神弥が荒れてるって聞いてたからどんな風になってるかと思ったけど……｣



そこで止めるとふふっと笑う。



｢変わってなくて安心したわ。……貴女のお陰なのかしら？｣


｢い、いえ！私なんて、何も……っ｣


｢貴女が何もしてないことは無いと思うの。だってあの神弥が、狼が居なくても大丈夫だなんて…｣