君は無垢なフリをして───本当は野獣。
「…結芽、帰るか。」
「は?!もう帰んのかよ!」
「何だ、神弥。まだ甘えたのままなのか。」
「ば…っ!あ、甘えたじゃねーし!」
ツーンとそっぽを向く神弥を心底おかしそうに笑いながら、神弥の頭をお父さんはワシワシと撫でる。
「神弥とお父さん、凄く仲良しなんですね。」
言えば、お母さんはふふっとだけ笑った。
「まだ3週間はこっちにいるから。会いに来い。」
玄関先で振り返ると、そう言って神弥に笑いかける。
「あんたもな。…バカ息子を宜しく。」
「また会えるの楽しみにしてるね。」
満面の笑みで手を振りながら、扉の向こうに消えた2人。
パタン、と扉が閉まる。
「神弥って甘えん坊だよね。」
「ち、違っ!」
「今さら隠さなくてもいいよ。」
「……。」