君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
し、下僕…


確かに雑用でも何でもするとは言ったけど…


こいつは私の事、女の子だって忘れてない?



「さっそく何か作ってもらおうかなぁ?」



ニコッと笑う中野 神弥にドキッとする。


何よ、体中から湯気出して水滴らせて。


一瞬、か、カッコいいとか思っちゃって見とれちゃったし。


全てはこいつが無駄に美形なのがいけないんだ!



「なぁ?山崎 花菜先輩?」


「せ、先輩とか言わないでよ!」


「じゃあなんて呼ぼうか?」


「別に呼ばなくてもいいじゃん。」


「や、不便だろ。…じゃ、花菜で。」


「呼び捨て?!」


「気にするな。」



気にするよ!


…中野 神弥は悪戯(いたずら)っ子のような笑みを浮かべる。



「早くご飯作ってよ。俺、腹ペコなんだよなぁ…花菜?」


「~~~っ、花菜って呼び捨てすんなぁ!」



私の叫びも(むな)しく。


結局、この日は「じゃ、得意料理作って。」と言われ、野菜炒めを作ったのでした。
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