君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
「そーだよ?あれは神弥くんじゃないよ。」


「じゃあ…」


「そもそも相手なんていない。1人でそれっぽくして見せてただけだよ。あんたがあの時間あそこに来ることは理事長室で聞いてたから。神弥に部屋入りたいって駄々こねて…神弥がいない間にあんたが来るのを待ってたの。」



帝ちゃん……


神弥が傍にいるのに…そこまでする必要あったの…?



「神弥くんはね、私を抱けないんだって。私が触ったら舌を噛みきってやるって。」


「どうして…」


「どうして?アンタがそんなこと聞くの?……アンタ以外に抱けないんだって。」



あはは、と笑う。



「だからさぁ、悔しいから。虚しいけど、アンタがいつ来ても良いようにずっと神弥って名前を呼んでたのよ。」



目の前で笑う帝ちゃんは、無理してるようにしか見えなくて。


この子も…苦しんでるんだ。


神弥が好きなのに、その想いを受け止めてもらえないから。
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