君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
「な、にするの!」



私が打った頬を押さえて叫ぶ、帝ちゃん。



「ねぇ、帝ちゃん。痛かった?」


「…っ、痛いに決まってるでしょ!?」



すごい剣幕の帝ちゃんに、つい微笑む。



「そうね。痛くしたんだもの。……でもね、痛いって幸せな事よ。」


「はぁ?」


「――帝ちゃん。死んじゃったら、痛みさえ感じられないんだよ。」



馬鹿にしたような顔つきだった帝ちゃんは、一瞬で…はっとした表情になる。



「確かに…死にたい、そう思う人の気持ちは分からないし、その思いを止める術も知らない。

だけど、分かるのは…死ぬ気もないのに死ぬなんて事をいう人は、死にたくても死ねない人を冒涜してるってこと。」
< 351 / 385 >

この作品をシェア

pagetop