君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
立ち上がると、ニコッと笑う。



「………ありがとう。」



帝ちゃんの笑顔は、どこか吹っ切れていて…最高に可愛く見えた。


(やっぱり…綾香に似てる。)



「うん!」



歩き去っていく帝ちゃんの後ろ姿を見送りながら、込み上げる涙を堪えていると。



「【偽善者。】」


「な…っ」



ハァ、と溜め息をつきながら近付いてくる崇大の姿。


「【なぁーにが、貴女は幸せ?だ。】」


「…っ、何よぅ!」


「【いや?…花菜にしてはよくやったんじゃないか?】」



いつものように、ワシワシと頭を撫でる。



「【綾香ネェが、最後の荷物を取りに来いって理事長が言ってたってよ。】」


「あ…」



最後の…荷物。


そうだ、私はもう…神弥の傍には居られないんだ。
< 355 / 385 >

この作品をシェア

pagetop